Mと申します。元外交官です。

このブログでは、外交官及び外務公務員として、20代から30代の青春を外務省と在外公館での仕事に費やしてきた私Mが、外交官の仕事や官僚の働き方について、きままにアップしていくサイトです。

主に外交官に興味を持っている人のために、

  • 外交官ってどんな仕事?
  • どういう人が向いているの?
  • 英語ができないと外交官になれない?
  • 外交官になるにはどうすればいいの?
  • 年収は?安定しているの?
  • 外交官ってどういう人達?なるには家柄とか関係するんでしょ?
  • 大使館って何をやってるの?

このような疑問に答えつつ、その他、社会人の卵である大学生の方たちに役に立ちそうな情報を不定期に上げていきます。

最近は語学教師をやりつつ、国家資格を取って別の事業を開始したので、その過程で得た情報もお届けしていきます。

Mの経歴

(このブログでは、身バレを防ぐために私の経歴は少しぼかしています。また、これまで外務省でお世話になってきた先輩や同僚に万が一迷惑がかかるといけないので、実名を出すことはしませんが、外交官の仕事、霞ヶ関の仕事、官僚と政治家の実態、その他私が外務省・大使館で経験したことを全て詳細になるべく包み隠さずお伝えしていくつもりです。)

私は外務省専門職員として外務省に入省し、20代から30代にかけての青春を外務本省と在外公館の職務に費やしてきました。

日本語含め四か国語の読み書きしゃべりができます。今はその培った言語を使って、一語学教師として田舎でのんびり暮らしています。

外交官になる前、当時まだ学生であった私が外務省に入省しようと思った理由は以下のとおりでした。

  • 法学部で得た法律の知識を活かした仕事に就きたい。
  • 大学で勉強してきた英語をはじめとする知識を仕事で活かしたい。
  • 「外交官」という響きがかっこいい!

今思えば、3つとも本当にしょうもない理由で自身の人生を左右する職業を選んだな、と反省しています。

だからこそ、同じ外交官、ひいては国家公務員をめざそうと思っている高校生、大学生、社会人の方々に、まずは外交官の仕事と外務省の実態を知ってほしいと思っています。

入ったあと後悔しないために。

穴が開けられ使えなくなった外交パスポート

外交官の仕事とは?

外交官の仕事とは何か?厚生労働省の職業情報提供サイトには以下のとおり書かれています。

外交官(外務公務員とは)?

「外交」を担う外務公務員は日本では外交政策の企画・立案を担う行政官として、海外では大使館や政府代表部といった在外公館を拠点に、外交の最前線で、国際社会における日本国及び日本国民の利益の追求というミッションを遂行する。

外務省全体としては、世界中の国・地域や国際機関との関係構築、安全保障、経済外交、国際協力、地球規模課題、軍縮、広報文化外交、国際法と、幅広い所掌分野を担当する。

https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/150

※「外務公務員」とは霞が関にある外務本省で働いている人のことです。この人たちが在外公館で働くと、通称「外交官」と呼ばれます。

霞が関の外務本省の仕事は?

 日本における業務内容は、情報の総合的な分析、国内の諸関係先との調整、方針決定、在外公館への「指示」を行い、その後政策の実施状況や結果を検証し、新たな施策に反映させる等の外交政策の企画・立案である。

https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/150

在外公館での仕事は?

 在外公館における業務内容は、相手国政府との調整や交渉、情報収集、邦人保護を含む領事業務、日本企業支援、広報文化活動と、多岐にわたり、赴任する在外公館を拠点に、その国や担当地域、国際機関において、日本の代表として、外交の最前線で業務に当たる

https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/150

外務省に入る前、私はこの文章を読んで、以下のような感想を抱いたんです。

ふむふむ、外交官の仕事は「日本の外交政策の企画・立案」を担って、「外交の最前線で日本国の利益」を追求する仕事なんだな・・・

・・・なんかめっちゃかっこよさそう

この厚生労働省の紹介文やいろんな職業サイトの説明を見ても、外交官という仕事は「かっこよさそう」なことしか書いていないので、具体的な仕事内容が全くわからないんですよね。

一方で、学生の気持ちを鼓舞するのに十分な説明とも言えます。

実際、私はこの「なんかかっこよさそう」という気持ちのままに外務省に入った人間なので。

今、この記事を読んでくださっている方に伝えたい。

  • 「とりあえずなんでもいいから働きたい」
  • 「公務員は安定してそうだから」
  • 「外国で働けれるとか、かっこいい!」

こういう気持ちで自分の人生を左右する職業を選ぶと、のちのち後悔することになりますよ

せめて「外交官」という責任ある職務を目指すのなら、

  • 「自分はスケールの大きい仕事をやりたい」
  • 「日本のことが大好きだから、世界中の人にもっと日本の良さを知ってほしい」
  • 「言語が得意だから、自分の特技を生かせる外務省で働きたい」

最低限、これぐらいの志を持っておきましょう。

私は、最も大事な20代、30代という最も大事な時を外交官としての職務に捧げてきました。

この間、同期の多くが外務省を退職していきました。

結局、私もその中の一員になりました。

非常な苦労と時間をかけて困難な試験を突破して外務省に入ったにもかかわらず、です。

「外交官として働く」というのは、肉体的にも精神的にも、本当に厳しく、責任が重く、つらいんです。

外交官として働くことを志している方いるとしたら、外交官がいったいどういうことをやっているのか正しく理解し、現実を知り、そのうえでもう一度外交官を目指すのかどうかを決めてほしいと思います。

外交官の仕事内容ややりがいについて詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

外交官に向いている人、向いていない人

私は外交官という仕事を正しく理解せず、ただなんとなく理解したつもりになって、なんとなく試験を受けて、なんとなく外務省に入りました。

今となってはさまざまな人と出会い、なかなか普通の生活を送っていてはできない経験をさせてもらった外交官として過ごした期間を全く後悔はしていません

ただ、当時の私がもし、もっと真剣になって外交官という仕事を理解し模索し理解していたら、もしかしたら別の道を選んでいたかもしれません。

私はそれなりに長く外務省に勤めてきたので、私自身多くの「外交官」を見てきました。

その人たちの仕事ぶりを見て、自分を見て比較して、あるとき、「ああ、こういう人が外交官として働くべきなんだ」「自分は外交官に向いていないんだ」と悟りました。

同時に、自分の長年の夢を追いかけるために、外務省を退職しました。

どういう人が外交官に向いているのか、自分なりの考えをまとめた記事もあるので、ぜひ以下のリンクもご覧ください。

外交官に英語は必須?

外交官は英語ができないと仕事ができません。

英語以外の第二外国語がいくら得意であっても関係ありません。

自分がたとえどの国に派遣されたとしても、その国の公用語が英語でなかったとしても、英語が使えなければ基本的な情報収集はままならないですし、その国に駐在する他国の外交官とのコミュニケーションをとるのも困難ですし、国際会議等の英語を共通語として話す場では議論に参加することはできません。

ただこれを聞いて勘違いしてほしくないのは、日本の外交官は皆、英語をある程度理解はしますが、皆がネイティブのように英語を理解しきれいに流暢に話せるというわけではないということです。

むしろ民間企業や大学生の中にも外務省勤めの人よりも英語を上手に話せる人はたくさんいます。

私も英語は苦手でした。外務省入省時に持っていた資格な英検2級のみ。TOEICテストは700点弱、入省前に受けたTOEFLibtテストも同期の中で最下位でした)。

もう本当に、あまりにも英語ができなくて、当時の仲間や上司には迷惑かけました・・・

そんな私でしたが、こんなボロボロの英語能力でも、外務省の試験では他の科目で頑張って点を取り、外交官になることができました。

当然、外務省に入ってからは英語ができなくて苦労しましたが、自分の専門語と一緒に必死で勉強して、なんとか英語でのメモ取りや普通の英会話ができるぐらいのレベルには持っていくことができました。

結論、何が言いたいかと言うと、外交官を目指そうと思っている人が「自分は英語が得意ではないから無理だ。あきらめよう」と思う必要は全くないということです。

外交官になるためには?

外交官を目指す人が最も気になることだと思いますが、結局外交官になるためになにをすればいいのか

答えは一つです。試験に合格すること。これだけです。

外務省に入るための試験については、以下の図を参照してみてください。

引用元:https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/150

試験を箇条書きにするとこうなります:

  1. 国家公務員総合職試験(大卒、院卒)
  2. 外務省専門職員採用試験(大卒、院卒)
  3. 国家公務員一般職試験(高卒)
  4. 経験者採用試験(社会人)

本当は国家公務員一般職(技術職)や臨時職員募集、期間業務職員という区分もあるのですが、基本的に上記の4つを想像していただければ十分です。

この中でも特に「外交官」と言われるのが①、②の区分になります。

外交官を目指す多くの人が、この①国家公務員総合職(いわゆるキャリア外交官)と②外務省専門職員(いわゆるノンキャリア)を見据えて猛勉強するわけですが、私個人的には、③国家公務員一般職試験(高卒)も、就職先として非常に有望な選択肢と思っています。

以下の関連記事も是非ご覧ください。

外交官の給料は?安定しているの?

新卒で外交官になる人は、2年目や3年目など早い段階で海外で研修・勤務をすることになります。

在外にいると、基本給の他に在外手当というものがもらえます。

基本給+在外手当が毎月入ってきますので、少なくとも手取りで毎月40万円ぐらいもらえます。

当然、自分の赴任する国によって在外手当の額は違いますので一概には言えませんが、そういう意味で給料は悪くありません。

ただ注意してほしいのが、これはあくまで在外公館で働いていた場合の給料です。

外務公務員が日本で働いているときは、残業をしない限り給料は正直そこまで高くありません。

特に外務省で働いている人が注意すべきなのが、在外公館での勤務を終えて日本に帰ってきたときです。

総じて、在外公館で働く場合と霞が関の外務本省で働く場合を比べると、外務本省で働くほうが激務です。

しかし、給料は在外公館で働いていたときよりも大幅にダウンします。

本省で働くほうが労働時間も長いし、精神的にきつい仕事も多いにもかかわらず、です。

外交官はずっと海外で働くわけではなく、当然本省での勤務も必要です。

本省で働く限り、給料は一般の国家公務員と変わりないため、高給取りとは言えないでしょう。

民間の大企業に勤めている人のほうがよっぽど貰っています

何を言いたいかと言うと、高くて安定的な給料だけを求めて外交官になろうと考えている人がいるのなら、それは全くおすすめしません

もちろん、私はお金の必要性やそれから生じるモチベーションを否定する気はさらさらないです。お金は、めちゃくちゃ大事です。

ただ、それだけが理由だと、もたないということです。

特に、国家公務員の給料は、世間一般に思われているより別に高くなく、また、在外から帰ってきたときに起こる「給料ギャップ」という罠があります。

安定的な給料だけで外交官や官僚を目指すと、絶対、心身ともに打ちのめされるときがきます(そもそも外交官・官僚で働いていると理不尽の連続ですし・・・)。

外交官を目指しているあなたにあらためて伝えたい。

本当に目指しているのなら、とりあえずお金のことは置いておいて、「なぜ自分は外交官として働きたいのか」という想いをお金以外の観点から明確にしましょう。

以下の関連記事もぜひご覧ください。

外交官になれるかは家柄で決まるのか?

そんなわけありません。試験で決まるんです。

とはいえ、私は学生の時、「外交官」と聞いただけで自分から遠い存在のように感じていました。

もちろん、言語を学ぶのが好きだった自分にとって、外国に赴任して言語を操って多くの人と交流して日本のために働く外交官という像に憧れを抱いていました。

外交官は英語がペラペラで博識で人格者の集まりなのだろうという、自分勝手な「外交官像」ができていました。

外交官とひとえに言っても、本当にいろんなタイプの人がいます。

私の10年の外務省人生で会った「外交官」の人たちで、鮮明に覚えているのは以下の人たちです。

  • 黙々と自身に与えられた仕事に励み、上司からは信頼され同僚・後輩から慕われる人(私が外務省人生で会った中で最も尊敬する人です)
  • 厳しいけれど、ぞの人自身は愛国者で、国益のことを第一に考えて働く人
  • 後輩の成長を心から願って、指導してくれる人
  • 自分の頭の良さを自覚しており、実際頭もいいのだが、常に周りの同僚をバカにしている人
  • 私利私欲のために外交上の業務でできた人脈を利用する人
  • 大使館に引きこもって誰とも会わない「外交官」

本当に挙げればきりがないほど、さまざまな種類の「外交官」に会ってきました。

上に挙げたとおり、私が心から尊敬している方もいれば全く尊敬できない、憎いとすら思った人もいます。

しかし、今思い返してみればそれも当然のことかなと思います。

外務省は6000人以上の従業員を抱える巨大な会社です。

これだけの人数がいればいろんな人がいるのは当然で、それはどの日本の大企業でも同じだと思います。

「外交官」や「外務省勤め」という色眼鏡で見てしまうと、皆が高潔で素晴らしい人間なんだと錯覚してしまいがちですが、外交官も「ただの人」なんです。

気負う必要は全くありません。

あなたが本当に外交官になりたいという気持ちがあるなら、その気持ちを持ったまま勉学に励めば、誰だって外交官になれる可能性はあります。

大使館って何をやっているの?

外交官として働く上で、必ず勤務することになるのが大使館です。

大使館の仕事内容は上記で説明したとおりですが、もう一度引用しておきます。

 在外公館における業務内容は、相手国政府との調整や交渉、情報収集、邦人保護を含む領事業務、日本企業支援、広報文化活動と、多岐にわたり、赴任する在外公館を拠点に、その国や担当地域、国際機関において、日本の代表として、外交の最前線で業務に当たる

https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/150

要は、日本とその国との関係を発展させる上で、その国に誰も日本人がいないと円滑に物事が進まないから、その国に日本人を送って、住まわせて、その国の政府関係者と交流させるための拠点です。

必要なときには、日本では取れない外交上の情報やインテリジェンス情報なども収集したりします。

ここには「大使館」という名のとおり、トップに大使がいます。普通は「特命全権大使」というステータスを与えられます。

なんだかとても偉そうな役職ですが、実質偉いです。

日本とその国との関係を発展させるための「全権」を与えられた人ですから、重要な事項を除き、自分の判断でその国の偉い人に会い国立場を発信します。

大使館はこの大使を筆頭に、さまざまな役職の人と部署があり、その中には在留邦人に関わる手続きや外国人へのビザの発給を行う領事部があります。

以上、まだ外交官になる前の過去の自分が、一番疑問に思っていたことをベースにまとめました。

その他、テーマ別にさまざまな記事を書いていますので、カテゴリーから自由に御覧いただければ幸いです。