私は外交官を目指していますが、総合職や専門職、一般職といろんな職種があって、どれを目指すべきか決めかねています。具体的にどういう仕事の違いがあるのか、知りたいです。
こんな質問いただきましたので解説します。
本記事の内容
- 国家公務員試験の流れ
- 外務省入省試験の種類と特徴を経験者視点から徹底解説
もくじ
国家公務員試験の流れ
そもそも国家公務員とはなんぞや?
まず前提の話として、外交官は国家公務員です。
外交官になりたいと思うのなら、国家公務員のことを知らなければなりません。
まず「国家公務員とは何か」ということですが、人事院のサイトでは以下のように説明されています。
憲法により「全体の奉仕者」と規定され、公のための仕事に携わる公務員は大きく国家公務員と地方公務員に分けることができます。
https://www.jinji.go.jp/saiyo/syokai/syokai.html
国の業務に従事する国家公務員は、特別職と一般職に大別されます。
皆さんが頭に思い浮かべる国家公務員とは、各府省で働く一般の行政官や、外交官、税務職員などではないでしょうか。これらのほとんどは一般職の国家公務員に分類されます。
元国家公務員(外務公務員)として働いた私がざっくり言うと、国家公務員とは、
- 時の総理大臣を全力でフォローし、
- 自分の省の社長(大臣や長官)になにをすれば良いか助言し、
- 国家が管理する行政サービスを企業や国民に提供し、
- もって日本の国益を確保する全体の奉仕者
と言ったところでしょうか。
国家公務員の具体的な仕事内容(外務省研修生編)が知りたい方は以下の関連記事もご覧ください。
国家公務員試験の流れ
国家公務員試験については、人事院などの公式サイトの他にも多くの試験対策塾がわかりやすく解説しているので、そちらを参照するのが一番です。
個人的に国家公務員試験の全体像をよく解説解説できているな、と思ったのが右のサイトです→TAC 公務員試験の流れと日程をわかりやすく解説
このサイトでは、公務員試験のことを「筆記のウェイトが高い就職活動」と言っています。
これはまさにその通りで、どの公務員試験も、①まずは筆記で一次試験を突破して、②二次試験として面接がある、という流れです。
民間企業でも筆記試験を用意しているところもありますが、それはあくまで面接官のための参考資料という類のものが多く、民間企業はやはりエントリーシートの内容と面接での対応に重きがあると個人的に思っています。
一方で、公務員試験は筆記が命です。筆記でいい点が取れないと面接に進めませんし、たとえ進めたとしても足切りラインぎりぎりの点数で面接に進んでも、ほとんど最終合格できません。
公務員試験は筆記の点数がすべて!!
そういう意味で、民間企業:面接>筆記、公務員:筆記>面接という傾向があるということは理解しておくとよいでしょう。
外務省入省試験
外務省に入省するための手段は複数ありますが、代表的なのが以下の4つです。
- 国家公務員総合職試験(大卒、院卒)
- 外務省専門職員採用試験(大卒、院卒)
- 国家公務員一般職試験(高卒)
- 経験者採用試験(社会人)
あと上記の試験とは雇用形態が異なりますが、期間付きで在外公館で働ける職として以下の二つがあります。
- 専門調査員(在外公館)
- 派遣員(在外公館)
それぞれの試験について、
- キャリアの流れ
- 仕事内容
- 昇進スピード
- 向いている人
- Mの経験
の項目に沿って、ひとつずつ解説していきます。
国家公務員総合職(大卒・院卒)
キャリアの流れ
- 将来の幹部候補。入省時に英、仏、独、中国、露、アラビア、スペイン、朝鮮(年によってはなし)の8言語のどれかが自分の言語として割り当てられます。
- 始めに本省での二年間の研修(いわゆる「ボロ雑巾」時代)を耐え抜きます。
- その後2年間(露語、中国語、アラビア語は3年間)の在外語学研修の期間が与えられ、研修を終えた後は基本的に自分の研修語を母国語とする国の在外公館に配属(二等書記官)となりますが、まれに直帰する(研修終了と同時に本省へ配属)人もいます。
- 研修を終えて本省に戻ったら、基本的にすぐに班長クラス(総務班長が多い)を務めることになります。
- 複数の課室の総務班長を歴任し、30代後半から首席事務官へと昇進。
- 複数の課室の首席事務官を務めたのち、課長になる前に2回目の在外公館勤務になる人もいれば、在外公館に出ずにそのまま課長になる人も。
- 課長職を歴任した人も、2回目の在外公館勤務はほぼ必ずあります(参事官または公使クラスで赴任)。
- それ以降のキャリアはさまざまで、在外公館勤務を希望する人はそのまま在外公館を何か所か回ることもあれば、帰朝(東京に戻ること)して局幹部や出向して要職を歴任する人もいたりなどさまざま。
- 全ては自信の能力次第ですが、堅実にやっていればどのキャリアもやがては大使・総領事職まで上り詰めます。
- なお、本省の局長や外務審議官、事務次官に上り詰める人は一握りです。
仕事の内容
- 外務省の政策策定と決定に大きく関わる職務であり、専門職員と比べると比較的本省勤務が多い。
- 官僚という性質上、首相や外務大臣、国会議員との関わりも大きくなり、かつ重要な外務交渉の先頭に立つ職務なので、責任もストレスも大きい。
- が、国家の外交政策の中枢に関わる仕事なので、仕事のやりがいとスケールは大きい。
昇進スピード
- 圧倒的な昇進スピード
- 在外語学研修を終えた段階(入省から5年目)で二等書記官に
- 在外から本省に戻れば課室の政策の方向性をまとめる総務班長を務めることが多い
- 40代で課長(行政職8、9級レベル)
ちなみに、国家公務員の給与は自分の級と号で決まります。級は職務階級に応じて上がり、号棒は勤続年数に応じて上がります。号棒は勤続年数に従い上がりますが上限が決まっており、級が上がらないといずれ頭打ちになります。他方、級は職務によって上がります。総合職は、専門職や一般職と比べて、この級の上がり方が尋常ではなく、だいたい40代で8級、9級に上がります。ちなみに、専門職員は50後半でやっと7級ぐらいです。
向いている人
- 外交政策の策定と決定に興味のある人
- 愛国心の強い人
- 国益のために働くことを至上の喜びとする人
- 理不尽に耐えられる人(ストレス耐性が強いこと)
Mの経験(いろんな「キャリア」のひとたち)
キャリア組にもいろんな人がいます。
自分が日本の外交を導いていくんだ!という強い志と誇りを持って仕事に従事する人もいれば、こんな職場とは思わなかったと言って辞めていく人も多いです。
非常に難しい試験を突破してせっかく高級官僚になったにもったいない、と思われるかもしれませんが、官僚として働く限り、首相を始め外務大臣、国会議員等の政治家との関わりは避けられません。
私も経験したからわかりますが、官僚というのはそれはもう非常に責任とストレスが大きい仕事です。
これまで外務省でたくさんのキャリアを見てきた私の感想ですが、キャリア組として定年まで外務省生活を全うする人たちの中には以下の4つのタイプがいました(あくまで個人の感想です)。
- マネジメント能力が高く、政治家との関係もうまくこなしていく人(外務本省で出生しやすいタイプ)
- 言語能力が高く、人と会って話しをするのが好きな人。(在外公館勤務に向いており、大規模公館の大使になる人もいる)
- 能力は正直高くないが、最低限の言語力と仕事をこなせる人(だいたい最後のキャリアは中小規模の大使館の大使を2ポストやって退官)
- 鈍感モンスター(「キャリアなのに全然仕事できねえよ、あの人」という陰口に全く気付かず、我が道を行くキャリアモンスター。こういう人でもキャリアというステータス上、総領事ぐらいまで行ってしまい、周りのまともな人達に悪影響を及ぼす)
ちなみに、在外公館で不祥事を起こして週刊誌に載ってしまうような輩は、だいたい4つ目のタイプな気がします。
国家公務員総合職になるためには?
総合職に受かるために必要なのは、すばり、学歴と試験の点数です。
総合職の採用は、だいぶマシになったとはいえ、まだまだ学歴で判断されることが多いです。
学歴は、できれば東大、京大、一橋、阪大等の国立か早慶が望ましいです。
学歴で勝負できない方は、一次試験の筆記において圧倒的な点数を取るしかないわけですが、総合職の試験勉強をしてきた経験からお話すると、総合職試験は非常にレベルが高く、通常の専門職レベルとは一味も二味も違う難易度です。
総合職を目指す人ような人なら、ある程度勉強の仕方というものがわかっているはずなので、独学でも数年頑張れば十分合格できるとは思います。
が、最短ルートはやはり予備校を利用することでしょう。
予備校は、最短合格ルートを提供してくれるツールです。
お金はある程度かかりますが、合格のためのノウハウを教えてくれると思えば、将来安かったと思えるでしょう。
独学は、お金はかかりませんが、自分がこれだと思った勉強法が間違っていて、結果試験で全く答案を書けなかったとなったら、時間と労力の無駄です。
以下、友人のキャリアに聞いた合格までの道を載せておきます。
外務省キャリアの友人T
使った予備校:LEC東京リーガルマインド
選んだ理由:現役で合格したかったので、やれることをやるという意味で予備校は必然だった。教養試験は過去問も充実しているので独学である程度できたと思うが、論文や面接、官庁訪問対策は一人では限界があったので、利用した。学費を出すだけの価値はあったし、結果的に合格できたので、利用してよかった。総合職試験対策は、いろんな予備校がやっているので、どこが一番いいということは言えないが、自分は聞かれたら自身の体験もあるのでLECをおすすめしている。
※LECのホームページは右リンクからご確認ください→LEC東京リーガルマインド
外務省キャリアの友人Tの後輩A
使った予備校:アガルートのオンライン講座
選んだ理由:総合職試験の難しさと独学合格が厳しいことは知っていたので予備校は使う予定だったが、なるべく安くかつオンラインでできるところを探していた。アガルートは完全オンラインで自分の好きな場所で講座を受けられるし、面接対策もしっかりしていたので自分に合っていた。
※アガルートのホームページは右リンクからご確認ください→アガルートのオンライン講座
外務省専門職員(大卒、院卒)
キャリアの流れ
専門職員は文字通り、言語とその国の専門家として、外交政策策定の根幹を担う立場の人たちです。
外務省専門職員試験(いわゆる「外専」)に合格すると、まず自分の外務省人生における専門言語を言い渡されます。上記の総合職に割り当てられる8言語以外に、多くの言語の候補があります。それこそ、ミャンマー語、ノルウェー語、スワヒリ語、スロヴァキア語、ハンガリー語、ヘブライ語などなど、世界のあらゆる言語を言い渡される可能性があります。その言語を言い渡された人は、その言語と国の専門家として将来を期待されるわけです。
- 外務省入省後の流れは総合職と似ており、まず本省研修(ボロ雑巾時代)を一年間耐え抜きます
- その後外務省の研修所(@相模大野)で約3ヶ月ほど言語研修を含む外交官研修を終えたのち、自分の言語を学ぶのに適切な地へと飛び、そこで2年間(アラビア語は3年間)の語学研修を行います。
- 2年間の語学研修を終えた人は、自分の言語を母国語とする国の在外公館にそのまま上がることになります(ただ仏語の人はフランスでの研修後、だいたいの人はアフリカへ飛ばされる印象です)。
- 在外での役職は三等書記官からはじまり、基本的な流れとしてそこで3年間の在外勤務を終えて日本へ。または2年間そこで、あと2年間は別の国の在外公館で勤務(または同一国内の別の公館(大使館→総領事館、総領事館→大使館など))、その後帰朝(東京へ戻ること)のパターンが結構多いです。
- ただ、スロヴァキア語やスワヒリ語、ヘブライ語といった「超」マイナー言語の人は、研修終了後その国に5、6年間、中には10年間いる人もいます。
- 在外勤務を終えた後は、本省・在外公館勤務を6、7年のサイクルでこなしていくことになります。
- もちろん、本人の希望によっては、在外勤務を長くすることも可能ですが、若いうちはあまり自分の意見は通らないので、上記のサイクルで働くのだということを理解しておけばいいと思います。
- 在外後の本省での職務は外務事務官(現在は「主査」と言います)、その後キャリアを積んでいけば、本省では班長や課長補佐、室の首席事務官、在外公館では二等書記官、一等書記官、参事官、中規模公館の次席と昇進していき、優秀な人は最終的に総領事や大使への道も開かれています。
仕事の内容
在外公館では、その国と言語のプロフェッショナルとして、情報収集、人脈形成等あらゆることを行い、特に総合職の少ない中規模公館だと、専門職が館の要となります。
本省ではさまざまな道がありますが、地域課配属であれば国担当になります。
例えば、あなたがチェコ語の専門職員だったら、初めての在外公館勤務のあとに本省に戻ったら、中・東欧課(地域課)のチェコ担当(国担当)になる確率が高いです。
また、本省には地域課とは別に、機能局と呼ばれる部署(軍縮、国際法、原発協力、経済、文化外交などなど)もあります。
そういう場所に行って、言語とは別の分野の専門家になるという道もあります。
昇進のスピード
総合職と比べると昇進スピードは早くありません。
例えば、同期入省で入った総合職の人と比べると、まず初めての在外公館勤務の時点で自分は三等書記官、でも総合職の同期は二等書記官です。
専門職が三等書記官から二等書記官に上がるためには、早くとも5、6年は働く必要があります。つまり、同期なのに年月にするとすでに5年、6年の差がついているわけです。
このギャップは、国家公務員のシステムの構造上仕方のないものですが、やはり給料に歴然とした差が出ることから、外務省に入省したあとにこのギャップにショックを受けて辞める専門職の人も多いです。
この点をしっかり理解した上で、総合職を目指すのか、専門職を目指すのか、はたまた別の職種を目指すのか、よく熟考した方がよいでしょう。
向いている人
言語とその国の専門家として、在外公館勤務をより長くしたいと思っている人は、専門職に向いていると言えるでしょう。
また、専門職は、ある特定分野の専門家として、政策決定の原案を考えるという仕事も多いので、最終的な決定は総合職にゆだねることが多いですが、その前段階で政策形成に関わる機会は非常に多いです。
外務省は専門職が支えていると言っても過言ではありません。
一方、専門職であっても、ある程度の中堅になれば中間管理職としてマネジメント能力も求められますし、国会対応は総合職でも専門職でも必ずつきものです。
特に、中間管理職の特徴である、上からも物言われ、下からも物言われという、辛い立場を経験せざるを得ません。
職人として言語とその国の知識だけ一流であればいい、というわけにもいかないので、その点は理解しておきましょう。
Mの経験(専門職はその道の変態)
外務省は6000人以上の大組織。
その分、変な人も多い外務省ですが、尊敬できる人もたくさんいます。
私が最も尊敬する方も、外務省の専門職の方でした。仮にDさんとしておきます。
Dさんは英語以外の専門言語の人なのですが、自分の言語は通訳レベルのぺらぺら具合で、その国のことも誰よりも知っていました。もちろん英語もぺらぺらです。
トゥリリンガルの時点で世間一般でスゴイと言われますが、その人は政治・経済・安全保障のこともとんでもなく詳しかったのです。それこそ学者レベルです。
「これが変態と呼ばれる人なのか」と思いました(誉め言葉です)。
その人は未だに外務省で働いています。本人も言っていましたが、天職のようです。
私はその人の働きぶりを、本省でも在外でもそばで見てきました。
ずっと残業しっぱなしです。
言語や自分の好きな分野のことをやっているわけではなく、国会対応や誰も引き取らない些末な仕事も、人柄の良さ故によく引き取っていました。
研修生に任せればいいのに、という仕事も自ら進んでやって、それ故にだれよりも残業していました。
もし私が彼の立場だったら、軽く発狂しているでしょう。
でも、彼はいつも楽しそうに仕事をして、嫌な仕事も後で笑い話に変える度量を持ってました。
そのとき、しみじみと思ったのが、こういう「変態」が外務省を、日本という国の外交を支えているんだな、とあらためて思いました。
私は残念ながら「変態」にはなれませんでしたが、今は別の道で自己実現ができています。
彼にとっては、外交官として働くことが彼の自己実現の場だったのだろうと思います。
外交官を目指そうと思っている方は、ぜひ「これだけは他の人に絶対負けない!」という変態級の専門家を目指してください。
そういう人なら、きっと外務省としてのキャリアを最後まで全うできるでしょうから。
外務省専門職員になるためには?
今、外務省専門職員に合格する人の9割以上が、TACが経営するWセミナーに通っています。
外務省専門職は、もうこのWセミナーが独占していると言っても過言ではないので、予備校に通ってこの試験に受かりたいと思っている人は、迷わずWセミナーでしょう。
以下、同期のコメントです。
外務省専門職同期K
使った予備校:Wセミナー 外務専門職コース
選んだ理由:外専(外務専門職試験)はWセミナー一択。むしろここ以外ないのでは? 外専で一番やっかいな国際法の論文の過去問は書店では手に入らないので、Wセミナーの教材を使うしかない。集団討論や面接も一人では限界があるので、外専を本気で目指すのなら、Wセミナーに通うべきだろう。
※Wセミナー公式HPは、右リンクからご確認ください→Wセミナー 外務専門職コース
国家公務員一般職試験(高卒)
キャリアの流れ
- 入省後の始めの流れは総合職や専門職と変わりなく、基本的な研修を受けたあとにまず本省配属になります。
- 配属先は地域課や機能局、大臣官房等さまざまで、配属先の課室の予算執行や会計、文書管理等の事務を担当することになります。中には、外務省の幹部(局幹部や外務審議官など)付きになる人もいます。
- 例えば、私がまだ入省したての時に、同じ時期に一般職として同じ課に配属になった人(Hさんとしましょう)は、課員が外国に出張する際に必要な手続き(出張決裁手続き)をしたり、課長が議員会館に向かう際に必要となる車の手配、その他全般の事務的作業をしていました。
- 総合職や専門職と違い、一般職の方は本省での研修期間が長いです。約5年間、本省の部署を2、3カ所まわり、その後在外語学研修に出ます。
- 私の同期の一般職Hさんは、在外公館での勤務前に、ロンドンで半年間語学留学をしていました。もちろん給料(在勤手当)はでます。
- 英語以外にも中国語、ロシア語、スペイン語といった言語の研修も10か月間できます。
- 語学研修を終えた人は、ある国の在外公館で、会計や通信、領事業務に従事することになります。
- 基本的に情勢が安定している限りルーティンワークが多いので、残業をしないで帰れることが多いです。
- もちろん、外国にいる限り突然その国の治安が悪化したり、上司がとんでもない人だといろんな仕事があって残業せざる得ないときもありますが、通常時であれば総合職や専門職の人と比べて残業率は少ないように感じます。
- 在外公館勤務を終えた方のその後のキャリアはさまざまです。
- 本省に戻って人事課や会計課、情報通信課や福利厚生室、儀典局、地域局や機能局の課室の庶務班の中堅になったりなどなど、行き先はさまざまです。
- そのまま10年以上ずっと本省にいる人もいれば、5、6年のサイクルで本省と在外を行き来する人、在外公館を強く希望してずっと在外にいる人もいます。
仕事内容
証明書の発行や福利厚生、情報環境整備、会計業務、領事業務など、省内の事務業務を担当します。
外務省の活動は総合職と専門職だけでは当然成り立たず、この組織の活動を根幹から支える人達を採用しています。
昇進スピード
総合職と比較すると早くはありません(総合職が圧倒的すぎる)が、専門職とは大差ありません。
堅実に職務をこなしていけば、最終的なキャリアとして本省では課長補佐、上席専門官、在外では一等書記官や参事官となります。
向いている人
総合職や専門職の英語以外の言語を持っている人と違い、一般職の人は基本的に「自分の言語」という概念がないので、さまざまな在外公館に赴任できるチャンスがあります。
そういう意味で、言語や地域に縛られずいろんな国で働きたいと思っている人にとっては、最適な職務だと思います。
また、職務内容も領事や会計、通信といった、政務班や経済班と比した場合にルーティンワークが多く、政務・経済と比べて仕事で外出する機会もそこまで多くないので、ひきこもってデスクワークをしたい人にも向いています。
Mの経験(高卒一般職の魅力)
この高卒一般職で外務省に入るという道は、世間一般にはあまり知られていません。
ただ、上記で述べたとおり、研修内容も総合職・専門職と大差ないぐらい充実しており、在外公館で働く機会も多く与えられます。
そういう意味で、政治や経済、安全保障、国際法など特定の分野に興味があるわけではないけど、外国で働いてみたいという人にとって、これほど魅力的な仕事はないんじゃないかと個人的に思っています。
試験内容も総合職や専門職と比して量も少なく、特定の試験対策をみっちりやれば、誰にでも合格できる可能性があります。
私の尊敬する一般職の方は、本省での勤務を終えた後、ロンドンで英語研修を行い、その後ポルトガル大使館に赴任し、その後本省に戻って情報通信課や在外公館課を経験、その後イエメン、バーレーン、トルコとあらゆる国に赴任して、人生を謳歌しているようです。
高卒一般職、個人的に超おすすめです。
国家公務員一般職高卒職員になるためには?
高校を卒業している人なら、誰でもなれるチャンスがあります。
ただ、通常の高校の授業は、公務員試験に受かるためのノウハウなんて教えてくれないでの、本気で試験に受かりたいなら、予備校か高校卒業後に専門学校に通うことをお勧めします。
以下、友人の一般職高卒職員から聞いた話です。
外務省一般職高卒職員D
使っていた予備校(専門学校):大原学園専門学校
選んだ理由:公務員試験の「こ」の字も知らなかったし、高校卒業直前に外務省高卒程度試験を知ったので、高校卒業後思い切って専門学校に入学した。自分は「勉強を強制される環境」じゃないと勉強できない性格だったので、結果的に専門学校に入ってよかった。学費はそれなりにしたが、外務省に入って在外で勤務するようになったら、親にすぐ返せた。
※大原の公式HPは、右リンクからご確認ください→大原学園専門学校
高卒職員F(Dの後輩)
使っていた予備校(専門学校):アガルートのオンライン講座
選んだ理由:高校のときから外務省の一般職に興味があり、自分で試験対策本を買って勉強していたが、独学だけだと不安だったのでアガルートを使った。専門学校に入るほど金と時間に余裕はなく、かといって通学も面倒だったので、完全通信でできるアガルートを選んだ。特に一人だと限界がある面接対策を、アガルートだと何度もできるのはよかった。
※アガルートのホームページは、右のリンクからご確認ください→アガルートのオンライン講座
外務省一般職高卒職員について、ここでは書ききれないこともありましたので、興味のある方は以下の記事もご参照ください↓
経験者採用試験(社会人)
これは社会人等を経験してから外務省に中途で入る方々です。
私がこれまであった中途採用の方は、国連機関等で期間職員として働いてきた人が、その職務の延長上として外務省に入省する場合が多かったです。
国連機関で働くことは、基本的に任期付きの仕事が多く、常に仕事を探して応募してキャリアアップしていく必要があります。
そういう意味で、常に職を失うという可能性があるので、そういうところで働いていた人が「安定」を求めて外務省に入省する際、この中途採用試験で入ってくるという印象です。
ただ、中途採用で入る人は「即戦力」として雇われるので、新卒で外務省に入る総合職・専門職・一般職と比較して、研修はほとんどないに等しいです。
よって、もし転職先として外務省を視野に入れているとしても、あなたが20代であるならなるべく公務員試験を突破して入省するほうが、研修を受けられるという意味でお得です。
ちなみにこの中途採用にも総合職・専門職・一般職の枠があり、総合職として中途採用で入省すると早速総務班長や首席等の管理職を務めることになるので、外務省特有のマネジメントを全く知らない人が突然首席になって働くと、いろいろ苦労があるようです。
専門調査員
専門調査員(いわゆる「専調」)は外務省の正社員ではなく、国際交流サービス協会というところが応募している、いわゆる派遣社員のことです。この点は派遣員と一緒です。
在外公館は外務省の人だけでなく、警察庁や経産省、防衛省など、いろんな省庁から来る出向者の方で構成されています。
そして、どの在外公館(特に大使館)にも、専門調査員というポストがあります。
任期が決まっており2年間です。昔は何回も延長が可能だったようですが、制度の変更により、今は一つのポストに原則2年間という縛りができてしまったようです。
ですが、そのポストを終えても、別の在外公館の専門調査員として何回でも応募が可能です。
仕事内容と向いている人
その名のとおり、その国の政治や経済、社会、安全保障、文化等に関する情報収集を行います。
情報を収集する手段はオープンソースも使いますが、基本的にその国の学者やジャーナリスト、NGOの代表等に実際に会って話しを聞いて有用な情報を聞き出します。
総合職や専門職とかぶる面もありますが、右二つの役職は情報収集だけでなく、その国の外務省や関係省庁の幹部等と会談して総理や外務省幹部の現地訪問の調整をしたり、日本とその国との関係強化のための具体的なプロジェクトの立案等、情報収集だけやってればいいわけではありませんが、専調は基本的に情報収集だけやればよいです(もちろん館や大使の方針によりますが)。
そういう意味で、いろんな人と会って情報収集を行うのが好きな人、好奇心が旺盛な人、ジャーナリストや学者タイプの人が向いているかもしれません(実際記者や学者の人も結構います)。
派遣員
派遣員も専調と同様、国際交流サービス協会が応募して外務省に派遣をしてくる派遣社員です。
雇用形態は専調と似ていますが、仕事内容は全く違います。
派遣員の仕事はざっと以下のとおりです。
- 出張者、着任者の手当(必要書類作成、空港出迎え、住居探しの支援等)
- 配車(館内の人達がアポ先に行く際の足(車)を手配する)
- 総務業務・会計業務(総務班長・会計班長の補助)
もちろん館によって仕事の内容は変わりますが、だいたい上記の感じです。
これらの事務をこなす上で外部と連絡を取る必要があるため、当然その国の言葉はできたほうがいいです。
特に旧ソ連諸国では、いまだにまともに英語が通じない国もあるので、ロシア語ができる人必須みたいなところがあります。
派遣員として雇われる方は大学卒業後の比較的若い人が多いですが、たまにフリーランスで働く40代ぐらいの人もいます。
以上、外務省・在外公館で働くためのさまざまな職種について解説してきました。
このように「外務省で働く」と言ってもさまざまな形があるので、それぞれの職種のことをよく調べて、自分に合ったものを選ぶのが良いです。
※以下に、本記事で紹介した予備校・専門学校のリンクをまとめて貼っておきます↓
アガルートのオンライン講座
大原学園専門学校
LEC東京リーガルマインド