外交官の仕事

【外交官の適性】外交官に向いている人とは(外国生活ムリならやめとけ)

自分は将来外交官として働きたいと思っていますが、「こういう人が外交官に向いている」といった基準はあるのでしょうか?外交官の適正について知りたいです。

こういう質問に早速お答えします。

ずばり、外交官に向いている人は以下の特徴を持つ人です。

  • 外国生活ができる人
  • 飲み会が好きな人(社交的な人)
  • 知的好奇心が強い人
  • 理不尽に耐えられる人
  • ※言語が得意である必要はぶっちゃけありません

一つずつ解説していきます。

もくじ

外国生活ができる人

外交官として働く以上、必ずどこかの国に赴任してそこで暮らす必要があります。

高校や大学時代に留学経験がある方はわかると思いますが、「外国で暮らす」ということは自分が今まで当たりまえだと思っていた多くのことを捨てなければいけないのです。

以下、主な3つの例です↓

  • 「日本語で話せる」という安心感とアドバンテージ
  • これまでの人生で得た「日本での常識」
  • 日本食

詳細に解説します。

「日本語で話せる」という安心感とアドバンテージ

私は外務省人生以外の期間を合わせたら約8年間以上は外国で暮らしてきたのですが、日本語で話して相手がそれを理解してくれる」という環境は、すさまじい安心感と生活・仕事上のアドバンテージを与えてくれるのです。

私がまだ新米外交官として外国で働きはじめたとき、在外公館内で日本人と話すときは当然日本語ですが、現地職員とは英語あるいはその国の言葉でコミュニケーションを取らなければいけません。

仕事において日本語以外でコミュニケーションを取らなければいけない場合、常に自分の発する言葉に対して緊張感が発生するものです。

  • 「こういう言い方をして大丈夫かな」
  • 「失礼ではないかな」
  • 「この仕事を依頼したいけど英語でなんて言うんだっけ」
  • 「いざ準備して話してもうまく相手に通じない」

常にこういう悩みや葛藤との戦いです。

これが日本語である場合、成人を迎えられた方ならおそらくほとんどの日本語の言い回しやニュアンス、どういう表現を使えば相手に粗相がないと言ったものが感覚的にわかるのですが、外国語で話す場合は常に頭で考えシミュレーションを行い、準備をして話さなければいけないのです。これは頭も心も本当に疲れる作業です。

他にも、単にスーパーに買い物に行ったときにレジ係の人から、「袋は必要か?」「カードは持っているか?」という質問を投げかけられたときさえ、慣れていない内は中々相手の言っている人が理解できずにとんちんかんな返答や会話をしてしまい、「ああ、もっとこう言っておけばよかった」と後から後悔するものです。

ごくたまにそういうことを全く気にしないで我が道を行く人がいますが、大抵の人はそうもいかないものです。

以上のように、外国で暮らしその国の言葉で話すことは、日本語で話す安心感とアドバンテージを放棄することになるので、ある程度慣れますが、いつまでもストレスは消えないものです。

これまでの人生で得た「日本での常識」

あなたが外国で住むとき、当然そこは日本ではなく、日本の常識が通じないことがあります。

特にそれを顕著に感じるのはスーパーやレストランでの店員の対応からでしょうか。

日本では「お客様は神様」なんて言われたりしますが、大抵の国では「お客様はカスタマー」です。神様でもなんでもありませんし、店員さんにとっては対等の立場です。

もちろん、日本人の方も別に店員さんに神様のように扱って欲しいと思っている人はほとんどいないものですが、日本でのスーパーやレストランでの自分がお客さんとして受ける対応というのは体と心に染みついているので、外国で店員さんからぞんざいに扱われるとついイラッとしたり落ち込んでしまうのです。

「常識」というのは体にしみこんでいますので、外国で暮らすならその心地よい常識を捨てなければ行けません。

他にも自分の住まいにおいて、日本であれば停電や断水といったことは滅多に起きませんが、世界の発展途上国の中には停電や断水が日常茶飯事的に起こる国があることを知らなければいけません。

さらに、水質も日本とまったく違います。日本は水道管から出る水を直接飲むことができる珍しい国なのです。ある国によって、シャワーを浴びたらさびた水が出てきたり、お湯で髪の毛を洗ったらごわごわになってしまったなんてことが起こることはよくあります。

日本食

今は世界中で日本食ブームですから、大抵の国ではおすしやてんぷら、牛丼を食べることができます。

ただ、外交官として働く以上、日本食がない国にも行かなければいけなくなるかもしれません。そこには当然スシローはありませんし、吉野屋やファミレスといったものもありません。外国で暮らす以上、食べれる日本食に制限がかかることは自覚しなければいけません。

以上にように、外国の生活に慣れることができるというのは、外交官として働くなら必須です。

事実、私の外交官の後輩に非常に優秀な方がいましたが、その人は日本の生活や食事が大好き過ぎて、でも自分の赴任地では満足な日本食品すら売っていなかったので、在外公館に勤務して2年も経たずに辞めてしまいました。

せっかく地獄の本省生活と2年の言語研修を終えたばかりにもかかわらず、です。

外国生活が合わなければそれは本人にとって大きなストレスなので、仕方ないとは思います。

でもせっかく苦労して外交官になったのに、外国の生活が合わなくてそれがストレスで辞めた、ということになると、やはりそれまでに費やした時間や労力がもったいないので、自分に外国生活をするための適性があるかどうかは、外交官になる前に知っておいたほうがいいと思います。

一番手っ取り早いのは留学でしょう。

お金に余裕があるのなら、大学生のうちに留学しておくのは有用だと思います。

飲み会が好きな人(社交性がある人)

私のこれまでの観察によれば、飲み会が好きな人は外交官に向いていると思います。

ただ、自分の気の許した友人と、という意味ではなく、初対面の人とでも気さくに話せるという意味です。

初対面の人との飲み会に抵抗なく行ける人は、基本的に社交能力が高いと思います。

当然のことですが、外交官である以上、我々の大きな仕事の一つは「人と会うこと」です。

自分の体験談になってしまいますが、自分は正直飲み会が好きでもなかったですし、初対面の人と会うときは常に緊張するタチでした。

こういう性格だったが故にストレスもかかりやすく、最終的には病気が理由で外務省を退職することになりました。

外交官を目指す人はぜひ「飲み会が好きな人」になってくださいね。

知的好奇心が強い人

外交官という仕事は人と会い、その会って相手に「ああ、またこの人と会いたいな」と思ってもらわなくてはなりません。

相手にもう一度会いたいと思ってもらうためには会話の引き出しが多くなくてはなりません。つまり、教養をつけなければいけません。

でも実際教養というのは実務上のデスクワークではあまり使う機会がないので、中々インプットする機会がありません。

仕事をしていると必要な情報のインプットというのは必死で行うものですが、例えば仕事とは全く関係ない小説を読んだり、自分の専門外のことをインプットするということになると、やはり知的好奇心の強い人にならなければ難しいです。

特に官僚という仕事をやっていると、多くの無駄な仕事もやらなければいけません。

しかもその量は膨大です。そういう環境にいると「無駄仕事は排除」「効率的に仕事」というマインドになってくるので、自分の仕事を行う上で直接関係な知識は無意識に排除するようになってしまうのです。

でもそれは外交官にとって致命的な行動です。相手に「この人はつまらない」と思われてしまったら終わりですから。

外交官を目指す人は、ぜひ学生時代からさまざまなことに挑戦し、さまざま知見や教養を得て欲しいと思います。試験対策だけに走ることは絶対してはいけません。

理不尽に耐えられる人

これは外交官として、ひいては官僚として仕事をする上で一番大切かもしれません。

外交官というのは、外国にいる間だけ「外交官」なんです。

日本に戻ればただの一公務員になります。つまり、外交官はどこまで行っても官僚なんです。

官僚はその時の首相や外務大臣のために、国益となる行動を取ってもらうために専門知識をインプットして、それを実行してもらう必要があります。

そういう意味で官僚はどこまで行っても政府の有力者に対して奉仕する存在です。

議員先生のように「先生」と呼ばれることはもちろんありませんし、自分が奉仕される立場になることもありません。

省内でどれだけ出世しても、上には首相や大臣、議員がいて、自分がトップになることもありません。

言葉を包み隠さず言えば、官僚は国家のため、国益のために身を捧げて働かなければいけません。

そういう働き方をしていると、当然理不尽はことはたくさんあります。

以下、私が体験した「理不尽」なお話をします

私がまだ在外研修を終えて館務に上がったばかりのとき、ちょうど日本から衆議院議員の団体が私の任国にやってきました。

ちなみに議員先生たちが議員として外国を訪問(費用はもちろん税金)する理由はさまざまですが、そのほとんどは「議員先生たちの外国旅行」とか言われています。

もちろん訪問中はその国のいろんな関係者に会うわけですが、議員先生たちにとってはそれが本命ではなく、「滅多に行かない外国で観光して美味しいものを食べて珍しいおみやげを買いたい!」と考えている人達が多いというわけです。

もちろんみんながみんなそういう人達ではありませんが、これまで多くの議員先生を外国で迎えた経験のある私からすれば、そういうマインドを持った人が多かったという事実は否定できません。

そして、議員というは官僚にとって文字通り「神様」みたいな存在です。

議員を怒らせたらあとで何をされるかわかりません。

それぐらい議員というのは官僚に対してさまざまなことを要求する権力があるのです。

当然理不尽は依頼もたくさんあります。

自分がどれだけ忙しくても、残業していても、議員先生はそれを考慮してくれませんから。

官僚はそのような理不尽に耐えられる鋼のメンタルが必要なわけですね。

※言語が得意である必要はありません

意外かもしれませんが、外交官として働く上で言語って、もちろん重要ですが最重要ではありません。

もちろん言語をきれいにしゃべれた方が会話もスムーズになりますし、情報収集の面でもメリットはたくさんあるのですが、結局相手が自分に会ってくれるかどうかというのは、自分がどれだけその人に対価として有益な情報を提供できるかということに加えて、「どれだけあなたが人として面白いか」ということなんです。

言語はあくまで手段に過ぎないので、外交官として働く上で一番重要なのはその人の「人間力」なんだと思います。

人間力を鍛えるためには、大学時代試験勉強ばかりしててはダメです。

外交官を目指す人が大学時代にやっておくべきことは、今後別記事にしたいと思います。

以上、外交官に向いている人についてお話しました。

ここまで記事を読んでくださった方

勘違いしてほしくないのは「自分は何にも当てはまらないから外交官は無理だ・・・」と思わないでほしいということです。

私だって外交官になった当初は、上に挙げたことに何も当てはまっていませんでした。

外国生活は好きではないですし、飲み会は嫌いですし、知的好奇心はありませんし、理不尽なことは大嫌いです。

それでも約10年間外交官を続けてきていいこともたくさんありましたし、その過程で成長できた機会もたくさんありました。

私のブログでは、外交官として働くことについて、ついネガティブなことも書いてしまいますが、外交官として働いていいこともたくさんあったので、外交官を目指している人は、ぜひそのポジティブな気持ちを維持してほしいと思います。

  • この記事を書いた人

M

元外交官【経歴】語学留学から帰国後慌てて職探し ▶︎ 外務省入省 ▶︎ 本省→在外→本省→退職 ▶︎ 培った言語を活かして翻訳、言語教師 ▶︎ 2児の父 ● マルチリンガル(4言語) ● 公務員働き方改革を心から願う(国会待機消滅しろ)

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