将来は国家公務員として働きたいと思っており、特に外務省勤務とかかっこいい!と思っています。けど、外務省って具体的にどんな仕事をやっているのか正直よくわかりません・・・
こんな疑問にお答えします。
本記事の内容
- 国家公務員(官僚)とは
- 外務省員の一日の仕事内容を、新入省員を例に徹底解説
もくじ
国家公務員とは
まず「国家公務員とは何か」ということですが、人事院のサイトでは以下のように説明されています。
憲法により「全体の奉仕者」と規定され、公のための仕事に携わる公務員は大きく国家公務員と地方公務員に分けることができます。
https://www.jinji.go.jp/saiyo/syokai/syokai.html
国の業務に従事する国家公務員は、特別職と一般職に大別されます。
皆さんが頭に思い浮かべる国家公務員とは、各府省で働く一般の行政官や、外交官、税務職員などではないでしょうか。これらのほとんどは一般職の国家公務員に分類されます。
次に外務公務員(外交官)の仕事についてですが、厚生労働省のサイトには以下のとおり書いてあります。
「外交」を担う外務公務員は日本では外交政策の企画・立案を担う行政官として、海外では大使館や政府代表部といった在外公館を拠点に外交の最前線で、国際社会における日本国及び日本国民の利益の追求というミッションを遂行する
https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/150
元国家公務員(外務公務員)として働いた私がざっくり言うと、官僚とは
- 時の総理大臣を全力でフォローし、
- 自分の省の社長(大臣や長官)になにをすれば良いか助言し、
- 国家が管理する行政サービスを企業や国民に提供し、
- もって日本の国益を確保する全体の奉仕者
と言ったところでしょうか。
新米外務省員(研修生)の一日
これだけだと国家公務員が実際どういう仕事をやっているのかわからないと思うので、私が外務省に入省したばかりのときの経験をさかのぼってお話いたします。
外務省に入るためには
まず前提の話として、外務省に入るためには国家公務員総合職試験又は外務省専門職員採用試験に受かる必要があります。もっと厳密にいえば、外務省に入るための手段は一般職試験(高卒)もあるのですが、ここでは大学生の新卒で専門職員以上で入ることを目指す人を対象にお話ししていきます。
国家公務員一般職の情報や仕事内容を知りたい方は以下の記事の該当部分をご参照ください。
外務省員にはそれぞれ自分の言語がある
外務省に入るための試験に合格すると、まず合格者それぞれに「研修言語」が割り当てられます。総合職には英語、中国語、露語、朝鮮語、仏語、独語、スペイン語、アラビア語が、専門職員には右で挙げた言語に加えてクロアチア語やスウェーデン語、スワヒリ語、ギリシャ語といった、いわゆるマイナー言語が割り当てられることになります。
これによって、外務省に入省時点から自分が学んでいくべき言語と将来の赴任先のビジョンが与えられるということですね。
専門職員であった私にも当然言語が割り振られました。
身バレを防ぐための何の言語であったかは申し上げませんが、自分がこれまで触れたことがない言語だったので不安であったことをよく覚えています。
まずは研修所で研修
新米の外務省員はいきなり霞が関にある外務本省に送られるのではなく、小田急線の相模大野にある外務省の研修所で研修を受けることになります。
ここでは自分に与えられた学習言語に沿って、語学講師の下マンツーマンに近い授業を受けることになります。総合職員も専門職員も、まずは4月一杯一か月間、ここでひたすら言語学習に励むことになります。
この一か月間の研修が終わると、いよいよ外務本省での勤務が始まります。いらゆる「研修生」として働くことになります。
自分が外務省のどの課室に送られるかは、これも4月の入省の時にあらかじめ教えられます。私が配属された先は「地域課」でした。
地域局と機能局
外務省にはさまざまな課や室がありますが、大きなジャンルとしてまず「地域課」と「機能局」に分かれます。
「地域局」とは文字通り、それぞれの外国との外交を担当する局のことを差します。例えば、外務省には欧州局というのがありますが、この局は文字通り欧州諸国との外交事務を担当する局であり、この局の中にはロシア課、中・東欧課、西欧課、中央アジア・コーカサス室といった「地域課」が存在します。
他にも、日本が外交上最も重視する国であるアメリカとの外交を担っているのが北米第一課と第二課であり、これらの課は北米局の中にあります。
対して「機能局」とは、国との外交を直接担当する課ではなく、原子力や条約、経済、国際法、国連外交といった、特定の「機能」に関する事務を所掌する局のことで、例えば外務省の中には「経済局」「軍縮・科学部」「国際法局」「大臣官房」といった機能局が存在します。
ちなみに「大臣官房」とは、外務省内部の事務を統括的に扱う部署のことで、会計課や外務省員の福利厚生を扱う福利厚生室、人事課などがこの部署に所属します。
「研修生」の本省勤務
さて、新米外務省員(以降は「研修生」と呼びます)の仕事ですが、地域課に配属になった研修生を例に以下のとおり挙げてみました。
- 電話対応(クレーム対応含む)
- 在外公館からの電報チェック、配布
- 課内部事務処理
- 他課からの依頼メール
- 資料作成
- 国会対応
- 情報公開
- 消極的主管争い
- 要人受け入れ業務
一つずつ解説していきます。
電話対応
これは外務省や中央省庁勤務に限らず、多くの新社会人がはじめに経験する鉄板業務ではないでしょうか。
ただ、外務省の電話対応は非常に特殊でやっかいな面があります。
やっかいな事例や克服方法を記述していたら長い文章になってしまいましたので、また追って別記事で載せたいと思います。
在外公館からの電報をチェック→重要情報を幹部に配布
外務省には電報システムというものが存在します。外務省は本省だけでなく世界153カ国に大使館が、その他大きい国には総領事館があり、そういうところから本省に対して送られてくる報告は「電報」と呼ばれ、電報システムという独自のシステムがあります。
本省とそれぞれの国の在外公館とでは当然時差があるので、本省の職員が寝ている間も他国の公館からは絶え間なくその国の情勢や外交について情報が電報によって送られてきます。なので、本省の職員が朝9時30分に出勤してはじめにやることが電報のチェックです。
この電報システムには外務省のほとんどの職員がアクセスすることができるのですが、当然個々人の立場や所属先によって見れる電報と見れない電報が存在します。そこには課の担当であれば見れるが局幹部には見れないものも多くあります。
局幹部はそれこそ膨大な量の電報をチェックしなければいけないので、すべての電報を局幹部が見れるようになってしまうとそれこそスパムメールにように大小さまざまな電報が局幹部の電報システム上であふれかえってしまうため、あえて制限しているわけです。
ただ、局幹部が見れない設定になっている電報でも局幹部に入れておいたほうがいい電報というのは存在するので、研修員が課のそれぞれの国担当の指示に基づいて該当の電報を印刷し、紙の形で局幹部の部屋に入れるという作業があります。
また、研修生でも慣れてくると、どういう情報を局幹部に入れればいいかがわかってくるため、やがては自分で電報を読んで選定することもやります。
ちなみに課によっては、研修生が就業開始時間前から出勤して朝刊を全てチェックし、それをまとめてスキャンしてクリッピングを作り、在外公館を含む関係者に送るという作業もあります。
会議のための資料とりまとめ
外務省、というよりすべての中央省庁では日常茶飯事的に会議が行われます。
会議はある重要な問題が起こった時、集まって意見のすり合わせをしたり、対応策を知恵を出して合って考えるという意味で本来有益なものですが、大きな組織になればなるほど会議開催時間を杓子定規的に設定していかなければならなくなるものです。
外務省も例にもれず、「毎週何曜日の何時から行う」と決まっている会議が多くあります。全てが無駄とは言いませんが、報告することはないけど何か言わなくては」というマインドで集まっている場合も多くあります。
このような会議の設定や会議に使う書類を用意するのも研修生の仕事である場合が多いです。やることは簡単で、右翼課から回ってくる会議に関する資料を課内の決裁を取るために回すだけです。
もはや毎週のルーティン化しているのですが、他の仕事が忙しくて忘れがちになります。
他課からの依頼メールをさばく
外務省は巨大な組織ですから、毎日あらゆる課室から自分の所属する課に対して依頼がやってきます。本当にたくさんの依頼がありますが、その一部をご紹介します。
- 発言応答要領に対する合議依頼
- 招へい者調査依頼
- 資料確認依頼
一つずつ解説します。
発言応答要領に対する合議依頼
まず「発言応答要領」って何?というところですが、文字どおりどのように発言して、こういう質問が来たときにどのような回答をすればよいか、ということが書かれた紙のことです。
誰のための発言応答要領かと言うと、公の場やプレスの前で代表して発言しなければならない偉い人のためのものです。ここでいう偉い人とは総理大臣や外務大臣、外務報道官や外務次官、局長のことを差しています。
学生時代、まだピュアだった私は首相や外務大臣が外交や国会の場において、記者や議員からの質問に対してしっかりと答えている姿を見て、「いろんなことを知っていてさすがだなあ、すごいなあ」と思ったものですが、ああいう偉い人の受けごたえはほぼ一言一句官僚が作っているということを外務省に入って初めて知りました。
考えてみれば当然のことですね。首相や外務大臣はあらゆることを把握していなければいけませんが、すべての事項に対する日本国の立場を常日頃暗記して質問がくれば答えられるわけではない。
しかし世間は首相や外務大臣がとんちんかんな発言を許してくれない。マスコミや野党はそういうところを狙って攻撃をしてきますし、外交戦もまさにそういう偉い人の一言一句が他国に向ける重要なメッセージとなるのです。
「外交は言葉である」。そういう観点から、官僚が作る発言応答要領というのは、日本国の外交戦略を簡潔な発言に置き換えたものであり、非常に重要な仕事となります。
話を戻しますと、この発言応答要領を作る人は誰かという話ですが、例えばスウェーデンの外務大臣が日本を公式訪問するとします。
当然その日程の中には日・スウェーデン外相会談が入るわけですが、この外相会談において日本の外務大臣のための発言応答要領の原案を作るのは、スウェーデンを担当している西欧課の外務省員(国担当と言います)が作ることになります。
この人が日・スウェーデン外相会談用の大臣発言応答要領を作ったらそれを西欧課の中で課長まで決裁を取ります。
当然、西欧課の課長の決裁が取れたから終わりでなく、その次は欧州局内の関係各課の合議を取る必要があります。
これは、日・スウェーデン外相会談の中で話されるのが日本とスウェーデンの二国間関係の話だけでなく、その時々のホットな国際情勢についても話題に上るからです。
例えば、ロシアのウクライナ侵攻の可能性という話題はほぼ必ず話題に上がることになるので、西欧課からロシア課に対して合議、つまり「西欧課が作成したこの発言応答要領の中のロシアに関する記述について、ロシア課として問題はありませんか?」ということを必ず依頼する必要があるのです。
この合議というプロセスは非常に重要で、もし西欧課がロシアに関する部分の発言をロシア課の決裁を取らず、そのまま局幹部まで上がって(あり得ませんが)大臣室まで決裁が取れてしまい、それを後からロシア課が知ったとなると、欧州局内部、ひいては外務省全体で大問題となります。
確実にもう一度ロシア課から決裁の取り直しとなり、無駄な時間となります。それぐらい、ロシア問題というのはセンシティブな問題であり、省内決裁をスムーズに進めるために合議というプロセスをぬかりなく進める必要があります。
というわけで、上記を例に言うと、ロシア課の研修生というのは常に他課から絶え間なく膨大な量の合議依頼が来て、ロシア課内で正しく決裁プロセスを行う必要があるわけです。それは、ロシアとの問題はどの国との二国間外相会談でも上がるくらいホットな話題だからです。
招へい者希望調査依頼
外務省には広報文化局があり、そこには人物交流室という部屋があります。
日本外務省は他国との関係構築の手段として、さまざまな国の要人や有力者、インフルエンサー等を日本に招待して日本のことを知ってもらい、親日家や知日派を育てるということを行っています。
外国の有力者に直接日本への好感度を上げることで、将来その国との外交においてその国のトップが日本に対して好意的であると、あらゆる外交の場面で有利な場面が出てくるものです。
ゆえに、外務省には外国要人の招へい制度というものがあり、以下のとおり招へい者のレベルに応じた招へいの仕組みがあります。
- 国賓
- 実務者公式訪問
- 外務省招へい
- 閣僚級招へい
- 戦略的実務者招へい
- 外交官招へい
上三つは主に国のトップを呼ぶためのスキーム(制度)です。
国賓は日本国が持つ現時点での最上級のおもてなしで、最近はコロナの影響で外国からの要人受け入れ自体がめっきり減りましたが。
さて、外務省にはこれらの招へい制度があるわけですが、これらのスキームを組織的に効果的に行う必要があるので、それを担っているので外務省の国際文化交流審議官の下にある人物交流室というわけです。
そして、どの国のどういう人を日本に招待するかということは外務省全体の問題なので、人物交流室は年度のある特定の時期になると、すべての関係各課(主に地域課)に対してを、その課としてどういう人物を呼びたいかという号令(依頼)をかけるわけです。そのような依頼がはじめに接到するのが総務班なわけです。
ただ、このどの国をどの順位で提出するかという問題は意外と難しく、それぞれの国担当に「何位を希望しますか?」なんていう依頼は出せません。
国担当はなるべく自分の担当している国の要人を呼びたい(呼べば自分の仕事が増えるので、必ずしも皆がこういう点を一生懸命やるわけではないですが・・・)わけですから、まずは「うちが取り持っているそれぞれの国をどの順位で提出するか」ということを、総務班で決めなければいけません。
つまり、研修生が原案を作らなければいけないのです。
もちろん、入省したばかりの身でいきなりどの国のどの人物を何位に、なんていう作業はできませんが、半年も働けばある程度「相場観」というものがわかってくるので、そのぐらいの研修生は総務班長と相談しつつ、この作業を行っていく必要があるわけです。
私もこの作業を研修生時代にやったわけですが、総務班で決めた順位に対し国担当の中に結構文句を言う人がいて、結構精神を削り取られたものでした。
資料確認依頼
これもかなりざっくりしたカテゴリー分けで恐縮ですが、外務省に限らずどの省庁もあらゆる資料を日々作成・修正しているわけです。資料の例をあげると、局長や次官への説明という省内部用のもの、議員先生への説明・手交用の資料、外務省のサイトにアップするもの等々あらゆるものがあります。
さきほど発言応答要領に対する合議依頼というものを説明しましたが、どこかの課が作った資料についても、日々いろんな課から合議が来るのですが、量があまりにも膨大なのでこの依頼をさばいているだけで一日が終わってしまうことも多々あります。
私の経験であったのが、明後日の局長レクのために世界の難民の動きに関する資料の確認・更新依頼が他課からあった時があります。
単純に去年の数字から更新すればいいだけの簡単な資料だったので、自分の課の国担当に依頼をまいて結果を刈り取って依頼元に返せばいいだけの仕事だと思っていたのですが、当時の私の上司(総務班長)が「この資料のレイアウトが気に入らん」と突然言い出し、もっと数字を見やすいようにここをこれこれこう変えろという依頼が研修生の私に降ってきました。
時刻はすでに夜8時、資料はその日中に依頼元に返さなければいけなかったので、私は日付を超えて作業をしたのをよく覚えています。
国会対応
これは聞いたことある人も多いかと思いますが、国家公務員辞職の理由ナンバーワン(と私が勝手に思っている)国会対応です。
国会対応の話で語ることは非常に多いため、別記事にまとめたいと思います。
この国会対応が研修生にどう絡んでくるのかという話だけここでお伝えすると、国会対応の仕事に「国会待機」というものがあります。
簡単に言うと「国会待機」とは、次の日に国会の本会議や委員会があるときに、ある議員から外務大臣または首相に対して「明日はこういう質問をするから」とあらかじめ通知しなければいけないのですが、これをあえて夜6時までに通知せず先延ばしにする議員がおり、質問があるのかないのか前日夜になっても宙ぶらりんの状態があります。
こうなってしまうと、官僚はどんな質問が大臣や首相に対して行われるかわからないので、質問をしてくる議員から質問が全部集まるまで霞が関の官僚は皆家に帰ることができないのです。
ゆえに、少なくとも外務省の各課はその日ごとに国会待機係を決めており、その係りに当たった日に国会待機がかかってしまうと、自分のその日の仕事が終わっているにもかかわらず家に帰ることができないのです。場合によってはこの待機が深夜に及ぶ場合もよくあります。
このような理不尽な係りですが、当然研修生はこの国会待機のローテーションに含まれています。しかも誰もやりたくない係りなので、研修生ばかりがこの係りを負わされる比率が高いのです。
優秀な人材が流出してしまう最大の理由の一つがこの国会待機だと思っているので、この腐った制度は一刻も早く改善していかなければいけません。
情報公開
研修生のお仕事の代表格の一つ「情報公開」です。
こちらも上記の国会対応と一緒で、語ることがあまりにも多いので別記事にします。
情報公開は、国民の「知る権利」の理念に基づき1999年の情報公開法の制定によりできた制度で、これまで一般に公開してこなかった情報をこの制度に基づいて行政に対して申請することで、一般人でも知ることができるようになったんです。
「知る権利」の担保という意味で意義のある制度であると思う反面、この制度を利用した濫用も多く、ただでさえ限られた人数で日々の業務を回している公務員の大きな負担となっています。
国会待機と同様、濫用を防ぐための正しい法改正が必要であると思っています。
消極的主管争い
聞きなれない言葉だと思いますが、これは公務員特有の概念ではないかと思います。
基本的に公務員はどれだけ仕事量をこなしても給料は一緒です。残業代は出ますが、残業代が欲しいだけなら、ただ少ない量の仕事をゆっくり残業時間込みでやればいいだけです。
出世をしたいなら上司や議員におべっかを使い、効率的に仕事にやればいいだけです。
何を言いたいかというと、公務員という仕事は本質的に余計な仕事を抱え込みたくないので、なるべく自分のところに仕事が来ないようなインセンティブが働くわけです。
こういう公務員の性質の下、「消極的主管争い」という言葉が生まれました。
簡単に言うと、消極的主管争いとは、例えば「ロシアとアメリカに関する仕事」が舞い込んできた場合、ロシアに関することは欧州局ロシア課が所掌していますが、アメリカに関することであれば北米局北米第一課(または第二課)が引き取ることになります。
こういう場合に消極的主管争いが生まれます。
どちらの課の担当も、先ほど説明した公務員のインセンティブの性質により、自分のところで仕事を引き取りたくないと思い、「これはアメリカに関する比重が高いからおたくの仕事だ!」「いや、一見アメリカのことに見えるがこれはロシアの国内問題の話だからおたくの仕事だ!」等々、どちらが仕事を引き取るかについて交渉しなければいけないのです。
そして、大抵こういう嫌な仕事はその課の総務班に回ってきて、総務班の中でもよほど重要な案件でなければ研修員が対応しなければいけません。
この交渉は、いわば「仕事のなすりつけあい」なので、精神的に非常に消耗するのです。
嫌な仕事ですが、外務省、国家公務員である限り、この消極的主管争いは必ず経験することになります。
たまに、「こういう不毛な争いをするぐらいなら自分が全て引き受ける」という聖人がいらっしゃいますが、こういう方はあらゆる仕事を押し付けられやすく、必然的に残業する時間が増えていきます。
私が本省で働いていたときも本当に優しく仕事ができる方がいたのですが、いろんな仕事を引き受けているうちに体を壊してしまい退職してしまった方がいました。
ですから、「断る勇気」というのは非常に大切になってきます。
要人受け入れ業務
これぞザ・外務省という仕事なのですが、日本にどこかの国の大統領や首相、外務大臣が訪日する場合、その一行を迎えいれる準備をするのは外務省の仕事です。
最近の例でいえば、2021年の東京オリンピックでは、コロナ禍という制約はありましたが、10カ国以上から首脳級の要人が訪日し、その受け入れ作業は外務省が行います。
特にオリンピックやG7、G20という各国から多くの要人が訪日する一大イベントでは、外務省内に○〇事務局というものを設置し、そこが要人受け入れのための業務(ロジ)を一括して行うことになります。
上記の大型ロジとは別に、何か大きなイベントが日本で行われなくとも、二国間関係の文脈でその国の大統領や首相が日本を訪問することは日常茶飯事的に行われており、例えば自分の所属する課のある国の大統領が訪日するとなると、その準備はその国担当だけでは手が回らないことがあるので、課全体で対応することになります。
当然、研修生は、その業務で発生するあらゆる雑務を担当することになります。
この要人受け入れ業務でおいて、普段できないさまざまな経験をすることができたので、このことも追って記事にしていきたいと思います。
メモ取り
長くなりましたが最後の項目です。
メモ取りは外務省員、ひいては官僚にとって必須スキルとなります。
「メモ取りって、何かの面談や会合に同席してメモを取るだけでしょ」と思われるかもしれませんが、これは学校の先生が言っていることをそのままノートに書き写すといったものとは全く性質が異なります。
メモ取りについても書くことが多すぎるので別記事にしようと思います。
以上、新米外務省員の仕事のお話でした。
総合職にとっても専門職にとっても、この初めの本省研修はとても辛く寝れない日々が続きます。
でもこれを乗り切れればバラ色の2年間が待っているわけですから、それを糧にほとんどの人は乗り切ることができます。